退去のあと、管理会社から届いた請求書を見て「こんなに払うの?」と驚く人は少なくありません。
でも、原状回復は「借りたときの状態に戻すこと」ではありません。家具を置いたへこみや、日焼けによる壁紙の変色などは、ふつうは貸主が負担するものです。

国のガイドラインと民法のルールを知っておけば、退去の立ち会いで落ち着いて確認できます。

この記事のまとめ
  • 解約の連絡は、契約書に書かれた期限まで(1ヶ月前が多い)
  • 原状回復は「借りたときの状態に戻す」ことではない
  • 家具のへこみ・日焼け・冷蔵庫の後ろの黒ずみなどは、貸主の負担
  • 立ち会いの前に、部屋の写真を撮っておく

解約の連絡はいつまで?

賃貸の解約は、契約書に書かれた通知期限までに、管理会社や大家さんに伝えます。
1ヶ月前としている契約が多いですが、2ヶ月前の物件もあります。引越し業者の予約と同じくらい早い時期なので、引越しが決まったらすぐに契約書を確認しましょう。

連絡するときに、退去の立ち会い日も決めておくと、引越しの予定が立てやすくなります。立ち会いは、荷物をすべて運び出したあとに行うのがふつうです。

原状回復は「借りたときの状態に戻す」ことではない

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復を次のように定めています。

賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること

つまり、借主が払うのは、わざと・不注意で傷つけたり、ふつうの使い方を超えて傷めたりした部分です。
ふつうに暮らしていてできる傷みや、年数がたって古くなった部分(通常損耗・経年変化)の修理代は、家賃に含まれているという考え方です。

2020年4月に施行された改正民法でも、借主は通常損耗や経年変化について原状回復の義務を負わないことが、はっきり書かれました(民法第621条)。

払わなくていいもの・払うもの

ガイドラインでは、具体的な例が示されています。

貸主の負担(借主は払わなくていい)借主の負担
家具を置いたことによる床やカーペットのへこみ・跡引越し作業でついたひっかきキズ
日焼けによる畳・フローリング・壁紙の変色タバコのヤニ・臭い
テレビや冷蔵庫の後ろの壁の黒ずみ(電気ヤケ)重い物をかけるためにあけた、大きなくぎ穴・ネジ穴
画びょうやピンの穴(下地ボードの張り替えがいらない程度)ペットがつけた柱のキズ・臭い
鍵の取り替え(壊したり、なくしたりしていない場合)落書きなど、わざとつけた傷
専門業者による部屋全体のクリーニング(ふだん掃除をしている場合)鍵をなくしたり、壊したりした場合の取り替え
引越し作業のキズは借主の負担

「引越し作業でついたひっかきキズ」は借主の負担です。家具を運ぶときに床や壁を傷つけないよう、引越し業者に養生(保護)をしてもらいましょう。

年数がたつほど、借主の負担は減る

借主が払う場合でも、年数がたつほど負担の割合は小さくなります。たとえば壁紙(クロス)は、耐用年数が6年とされています。国の資料では、入居時に新品だった壁紙を3年後の退去で張り替える場合、借主の負担は費用の50%という例が示されています。

ただし、わざとつけた落書きを消す費用などは、年数がたっていても借主の負担になることがあります。

契約書の「特約」も確認

ハウスクリーニング代を借主が払うなど、契約書に特約が書かれていることがあります。ガイドラインは法的な拘束力を持つものではないので、まず自分の契約書に何が書かれているかを確認しましょう。

敷金はどう戻ってくる?

敷金は、家賃など借主が払うべきお金の担保として預けるお金です。
2020年4月の改正民法で、部屋を返したときに、預けた敷金から未払いの家賃などを差し引いた残りを返すというルールがはっきりしました(法務省)。

原状回復の費用も、借主が負担する部分があれば敷金から差し引かれます。通常損耗や経年変化の修理代が差し引かれていないか、明細で確認しましょう。

退去の立ち会いの前にやること

  1. 部屋の写真を撮る:荷物を運び出したら、床・壁・水まわりなどを写真に残します。ガイドラインでも、写真や物件の状況をまとめたリストは、あとでトラブルになったときの証拠になるとしています
  2. 入居時の写真や書類を用意する:入居したときの写真や、部屋の状態を確認した書類があれば、立ち会いに持っていきます
  3. ふだんの掃除をしておく:ふつうの掃除をしていれば、専門業者による部屋全体のクリーニングは貸主の負担とされています
  4. 立ち会いで一緒に確認する:キズや汚れを指摘されたら、「いつからあったか」「通常の使い方でできたものか」をその場で確認します

請求の内容でわからないことがあれば、管理会社に内訳と根拠を聞きましょう。
話し合いで解決しないときは、消費生活センターなどに相談できます。消費者ホットライン「188」にかけると、近くの相談窓口につながります。

まとめ

  • 解約の連絡は、契約書の期限まで(1ヶ月前が多い)。立ち会い日もそのときに決める
  • 家具のへこみ・日焼け・電気ヤケなど、ふつうに暮らしてできた傷みは貸主の負担
  • 立ち会いの前に写真を撮り、請求は明細と根拠を確認する

あわせて読みたい

退去の前後にやっておきたい手続きです。

ほかにどんな手続きが必要かは、家族構成や持ち物によって変わります。下の診断を使うと、あなたに必要な手続きを期限つきで一覧にできます。

参考:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」/国土交通省(原状回復に関する参考資料)/法務省「賃貸借契約に関するルールの見直し」/国民生活センター「引越し」